イタリアの自動車メーカー、フィアットがインドのタタ・モーターズとの合弁事業を見直し、インド国内で独自のディーラー・ネットワークを構築する方針を表明した。これにより、今後はフィアットとスズキによる提携の強化につながる可能性が出てきた。
計り知れない可能性
ブルームバーグによると、フィアットは過去10年に渡り、インドでスズキと提携関係を維持してきた。関係を強化すれば、フィアットはアジア3位の市場で地盤を拡大することができる。一方、インドが総売上高の42%を占めるスズキも、フィアット製ディーゼル・エンジンのほか、ブラジル市場などでの同社の販売ネットワークを活用する恩恵を受けられる。
「スズキとの結婚は、フィアットとスズキ双方にとってプラスになる」と指摘するのは、IHSオートモーティブのインド支社で取締役を務めるディーペシュ・ラトール氏だ。「その可能性は計り知れない」という。
クライスラーを買収して米市場で地盤を築いたフィアットだが、売上高に占めるアジア市場の割合は3%前後にとどまっているのが現状だ。
独フォルクスワーゲン(VW)との提携を解消したいスズキと、フィアットのいずれも提携の可能性についてコメントを避けている。しかし、フィアットのセルジオ・マルキオンネ最高経営責任者(CEO)は4月26日、アナリスト向けの電話会議でアジアでの提携の重要性を認めた。
強固な地盤
スズキは日本を除くアジア太平洋地域において、2011年(12年3月締め)における同社の総販売台数(256万台)の60%を売り上げた。アジア全土にディーラー網を展開し、域内8カ国で9工場を操業している。
インド最大の自動車メーカーであるマルチ・スズキ・インディアは、同年に国内で85万5730台を販売した。
フィアットとスズキは06年、共同開発したSUVを、フィアットが「セディチ」、スズキが「SX4」のブランド名で販売を開始した。04年には、フィアットとGMの合弁がスズキに対し、インドとハンガリーで乗用車用ディーゼル・エンジンをライセンス供与している。スズキは09年、SX4向けにフィアット製ディーゼル・エンジンを購入。1月には、フィアットがマルチに対し、年間10万基の1.3リッター・ディーゼル・エンジンの供給を開始した。
苦戦の合弁
対照的に、フィアットとタタの合弁は苦戦を強いられてきた。両社は07年、インド西部のプネにおいて、乗用車で年産20万台、エンジンで35万基の生産を合弁で開始。フィアットとタタ、マルチが多彩な車種で使用する1.3リッター・ディーゼル・エンジンなどを製造してきた。
しかし、インドにおける合弁の11年(同)販売台数は、業界の3.3%増に対して24%の落ち込みを記録した。
同国最大のトラック・メーカーであるタタは、98年に乗用車の生産を開始した。08年6月にはフォードからともに英高級ブランドのジャガーとランド・ローバーを獲得した。両ブランドの12月締め四半期売上高は41%増に達し、タタ全体の約70%を占めた。
リスク
しかし、スズキとの提携強化がフィアットに一定のリスクを負わせる可能性もある。独デュースブルク=エッセン大学自動車研究所のフェルディナンド・ドゥーデン・ヘッファー所長は、「マルキオンネ氏はスズキとの提携を目指す中でリスクを拡大している」と指摘する。
一方、インドのコンサルティング会社であるTNSオートモーティブで取締役を務めるプラディープ・サクセナ氏は、フィアットとの提携による見返りが少ないため、スズキは消極的との見方を示す。エンジンの供給以外、フィアットがスズキを助けるプラス要素は見当たらないという。
しかし、インドにおけるスズキの市場シェアは近年、競争の激化で減少が続いている。プラハの自動車アナリストであるジリ・シマラ氏によると、「スズキはクライスラーのように、富裕市場へのスムーズなアプローチをフィアットに与える」と同時に、フィアットもスズキが関心を示す多くの技術を保有しているという。
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